デジタル遊牧民の高知来訪(Digital nomad visit us)
日比谷公園の埴輪(2023年)
先日、中国の若いカップルが私を訪ねて高知にやって来た。この友人たちとは十数年前にシンガポールの国際学生キャンプで出会ったのだが、その後も年1、2回のメールでのやり取りが続き、11年前には京都で再会し、忘れられない楽しい時間を過ごした。別れ際に「僕たち、結婚します!」との告白があった。夫は中国人、妻はインドネシアの華人、シンガポールで出会い、愛を育んだ。30代の大変優秀な若者たちである。
今年初め、「3月にProf.Ban(私はそう呼ばれている⁈)に会いに高知へ行きたい」というメールが届いた。びっくりするやら嬉しいやら…、遠くから来てくれる若者をどうやってもてなしたらよいかと思い悩んだ。私の体調も寸前まで不安定だった。期待が膨らむ中でいろいろ考えあぐねているうちにその日はやって来た。
3月初旬、高知駅前のホテルで劇的な再会を果たした。郊外へのドライブとも考えたが、滞在時間も短いので、我が家に来てもらいゆっくり話をすること、私が住んでいる町や老後の生活ぶりなど、普段のありのままの姿を見てもらおうと心に決めた。
その日は天気も良く、町は「土佐のおきゃく」で賑わっていた。まず、日曜市をそぞろ歩きながら高知城に向かった。お城の見える喫茶店で一休み。ひとたび座って話し出すと話が弾み、瞬く間に数時間が過ぎ、彼らはお城に登るチャンスを逸してしまった。
「『デジタル遊牧民』って知っていますか。僕たちは言わばそれですね」
・・・ 初めて聞く言葉である。
組織に縛られず、世界中どこでも好きな所に住んで、インターネットで仕事をする、新しい生き方をする人たちのことだそうだ。彼らもこれまでアジアのあちこちに移り住んでいる。在宅勤務や二拠点生活者が増えていることは知っていたが、世界を自在に移動する「遊牧民」とは!!
「マイクロ・リタイアメント(退職)、(ミニ・リタイアメント)」という言葉も教えてくれた。
「60代になるまで待って一気に退職するのではなく、数か月から数年のミニ退職期間をキャリア全体に散りばめて真に休暇を取り、新たなエネルギーを持って職場に戻ること」と日本語の説明をスマホの画面で見せてくれた。
そして、アメリカのChat GPT(2022~)と中国のDeep seek(2023~)というAIアシスタントについても解説してくれた。
Deep seek で「高知に3日滞在するが、旅行プランを作成してください」と入力すると、即座に次の答えが返ってきた。
1日目 高知城、ひろめ市、はりまや橋、竹林寺、夜は帯屋町
2日目 五台山、牧野植物園、土佐神社、桂浜
3日目 四万十川、仁淀川
興奮のひとときを過ごし、ひろめ市で鰹のタタキをつまんだ後、帯屋町で昼食をとった。
メニューが出てくるのを待っていると、彼らがスマホの画面で写真入りの立派なメニューを見せてくれた。
「えっ? この店の名前を知っているの?」
「いいえ、位置情報を調べたらこの店が出てきて、続けてメニューも・・・」
「えっ??」
私は驚くばかりだった。しかし、こんなことは日本の若者の間でも当たり前なのかもしれない。私はいよいよデジタル時代の原始人だなあ。
食後、我が家に来てもらい、弟を交えておしゃべりをした。日本やアジアの歴史、国際情勢・・・、話は尽きなかった。
彼らがふと漏らした「最近おむすびとみそ汁が好き」という言葉が意外で、嬉しかった。何しろ、「Ban sensei’s miso soup」の私である。レモンパイを食べた後だったが、みそ汁の作り方を実演し、ちょっとした余興となった。だしの素を渡したので、帰国後、料理が好きだという妻が夫に作って食べさせてくれることだろう。味噌(世界中の食材)は簡単に、安く、ネットで手に入るという。
夜は再び町に出て、よさこいパフォーマンスを覗いた後、寿司屋で話を続けた。
アドレナリンが溢れる楽しい一日、写真も沢山撮り、いろいろなことを学び合い、私は詳しいストーリーをブログに書きたいと思ったが、彼らはそれを察し、翌日丁重なお礼とともに、「写真や個人的な情報は載せないでね」と釘を刺された。デジタルの世界で生きている彼らだからこそ、その怖さも知っているのだろう。
翌朝、バスで神戸に向かう彼らを見送り、新しい情報と日本の田舎で静かに暮らす老婦に刺激と喜びを残していってくれた彼らに心から感謝した。そして、「私には想像もできない」21世紀を生き抜く彼らの未来に幸あれと祈った。

☘ キッチンにミモザを飾ってお迎えする


☘ いつものレモンパイでおもてなし

☘ 寝室もお見せしてしまう
☘ 吟味された、いくつもの素敵なお土産に感激!


リンク:
☘ おふくろの味
☘ Ban Sensei’s Miso Soup
🌸 不易流行