今晩のおかずは刺し身、正護が好きなキンピラ、そして味噌汁ばあやの味噌汁


8月初めのある日、おじいさんの雷が落ちた。おじいさんとの約束を終えたら、川に行こうということになっていたが、子供たちはなかなかやることをやらない。

「君ら、高知に何しに来たんだ! 毎日ゲームばかりやって、今日もおじいさんの言うことを聞かない。おじいさんは待ちくたびれた。今日はもう川には連れて行かないぞ。メシももう作らんからな!」

とおじいさんは怒って出て行ってしまった。

その夜はみなシュンとなり、晩御飯も食べず寝てしまった。

私はどうしたものかと困ってしまい、夜中考え続けた。

明日から頑張って何とか彼らを食べさせなければ! そして何よりも彼らになぜ、叱られたかを理解させなければ!

翌朝3人を呼んで「会議」を開いた。

「おじいさんは怒ってご飯を作ってくれないから、これから数日みんなで力を合わせてご飯の準備をしなくちゃならないのよ。わかった?」
「ところで、君たち、おじいさんがどうして怒っているか、わかっているの?」

「分かんな―い」という子らに私は一生懸命説明した。いろいろな話をしたが、ああ言えば、こう言うで、なかなか一筋縄ではいかない。2,30分経ったところで一護が「お腹がすいたよー。みりん干し焼いてもいい?」と言い出した。私の話を分かったかどうかは定かでないが、会議を終えた。私は子供たちとの意思疎通の難しさを感じ、挫折感すら味わっていた。

午後、正護に近くの魚屋で刺し身を、そして八百屋で翌日の焼きそばのキャベツを買いに行かせた。(正護が「八百屋なんて行ったことがない」と言ったのには驚いた。)

夕方私は車椅子を漕ぎながら、半月余りぶりに夕食を作った。片足で立って炒め物をしていると。正護がやって来た。

「いい匂い! キンピラ? 匂いですぐわかったよ」
「貴方、キンピラ好きでしょ?」
「ありがとう!」

私は思いがけない言葉に救われた思いがした。そしてお家の食事とはこういうことなのだ、と改めて発見した思いだった。

夜、おじいさんが少し酔っ払って帰って来た。

「あの子ら、ご機嫌じゃないか」

おじいさんのご機嫌も直っていた。色々報告すると「お姉さんは教育者だね。今日改めて思ったよ」と褒めてくれた。

これで一件落着! 

「明日まで私が何とか作りますから、おじいさんはご飯を作らないで下さいよ」

私はもうひと押しした。



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