生のリズム

 多民族国家マレーシアに住んでいた時、世界共通のカレンダーのほかに民族それぞれの暦(旧暦)があることを知った。このもう一つの暦こそが文化・宗教・精神的なバックボーンであり、民族の活力の源である。

 時の流れという区切りのないものに、古代の人々は叡智を絞って、それぞれの暦を作り、抑揚とけじめを設け、「生のリズム」をつくり出している。

 日本人にとって、1年で最も大切なけじめはやはりお正月とお盆だろう。高知の人々にとってはお盆によさこいが加わる。灼熱の大地と人間のエネルギーが一体化し、パワーあふれるこの土佐の夏祭りは最高の「ハレ」の日だ。よさこいは戦後のものだが、もはや土佐の大地に根を張っている。

 海外に目を転じると目下、16億人のムスリム(イスラ-ム教徒)が断食中だ。ラマダ-ンと呼ばれるイスラーム暦9月は、夜明けから日没まで食べ物も飲み物も一切口にしない。欲望をコントロールし、胃腸と心の「センタク」をするのだ。

 ムスリムはこの月を清き月とし、日没後の夕食や1か月の行を終えた後の大祭を楽しみにしている。

 いろいろなけじめのつけ方があるが、再生への起点になるという点では共通している。 (凛)

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