今年もマレーシア最大の祭日がやってきた。マレーシアでは15日前後の祝日が定められているが、ほとんどが宗教や民族の暦絡みなので、全国民がこぞって祝う日というのは案外に少ない。
 メーデー、国王誕生日、そして8月31日の独立記念日の3日だけである。元日が含まれていないのは意外かもしれないが、州によっては1月1日が祝日ではないところもある。祝日になっている場合でも、単なる休日であって、日本人のように感慨を催す、一年で一番大切な日ではない。

 話はそれるが、マレーシアでは州によって祝日が違う。クアラルンプール連邦直轄区の例で言えば、イスラームの祝日が5日、ヒンズー教、仏教、キリスト教が各1日、中国正月が2日、それに元日、メーデー、国王誕生日、独立記念日とクアラルンプール及びラブアンだけの連邦直轄区記念日が加わり、合せて15日となる。

 休日も、イスラーム色の強い州では、日曜日ではなく金曜日(イスラームのお祈りの日)を休みとしているところもあるし、各州(13州のうち9州)にはそれぞれのスルタン(イスラームの国王、現在その特権はかなり制限されているが)もおり、マレーシアという国は小さいながら、かなり地方分権が認められている国である。州によって、その歴史も民族構成も大きく異なり(特に東マレーシア)、地方色は豊かである。

 そんな多様さの中にあって、8月31日の独立記念日は真に民族・宗教を超えたムヒバの祭典であるといえる。ムヒバ(muhibah)は辞書で引くと、親善とあるが、主に異民族間の友情、友好という意味で使われている。

 毎年この日に向けていろいろな準備がなされる。例えば、その年の独立記念日のロゴと標語の選定。今年の標語は『新しい千年に向かって団結!』(Bersatu Ke Alaf Baru)である。因みに98年は『私たちの国、私たちの務め』(Negara Kita Tanggungjawab Kita)、97年は『高貴な行動、繁栄する社会』(Akhlak Mulia, Masyarakat Jaya)であった。

 国立美術館で『美術とナショナリズムー過去・現在』というテーマの展覧会が開かれたり、独立の英雄で、与党UMNO(統一マレー国民組織)の創設者ダトー・オンの話を主題にしたミュージカルが上演されたりする。また、テレビでは独立当時の映像や愛国歌の『のど自慢大会』なども放映される。

 8月中旬頃からは、赤、白、青、黄色の四色の国旗がまるで花が咲き始めたように目に付くようになる。新しいホテルや大きいビルには大型の国旗の垂れ幕が、アパートのベランダには中型の国旗が、そして町を走る車には小旗がはためく。

 独立記念日前夜のカウント・ダウンは日本の大晦日をより華やかにしたような雰囲気だ。昨年の前夜祭はペナンで開催されたが、今年は英連邦競技大会の会場ともなった、クアラルンプールのブキット・ジャリルで10万人の観客を集めて開催された。

 マハティール首相夫妻が最新モデルの国産車プロトンを自ら運転して入場し、観衆を沸せたり、各州の会場を中継したコーナーや人気歌手のライブ・コンサートなど、テレビで見ているものにとっても楽しい夏の夜のイベントであった。

 けさは、8時から約2時間半にわたり独立広場で記念式典が行われた。国王夫妻はじめ、全閣僚がユニフォームを着て参列。その前を官・民の組織がそれぞれに工夫を凝らした衣装に身を包んで、元気よくパレードした。特に印象的だったのは、約30分にわたった学生2千人による国旗やロゴなどのマスゲームと最後を飾った戦車や空軍機のデモンストレーション。自分達の国は自分達で守るという非常事態への備えも忘れていない。

 MERDEKA(独立)! MERDEKA! MERDEKA!

 今日は、一日中この声が、テレビから流れている。マレーシア、42歳おめでとう!