経験がすべて役に立つ

 来年、開学10周年を迎える高知工科大学は私学であるが、高知県民の皆様に建てていただいた公設の大学である。

 美しいキャンパスや様々な先駆的な取り組みは全国的にも注目を浴びている。

 実は昨年、休暇で帰省した折に、東京の知人を案内していて偶然高知工科大学のキャンパスに足を踏み入れたことがある。

 その時、高知にもこんな素晴らしい大学があるのかと、「灯台下暗し」を恥じたことだった。

 翌年、その憧れの大学に勤務するようになるとは! しかも「海納百川」の言葉があるように、これまでの様々な経験がすべて役に立つ仕事なのだ!

 私が勤務している国際交流センターについて、少しお話してみよう。IRCの略称で呼ばれる同センターは2003年に開設された。

 主な仕事は高知工科大学独自の「特待制度」による大学院博士課程の留学生の募集、選考、受け入れ業務である。

 初年度は26名、2年目は14名、3年目の今年は14名の特待生を受け入れ、現在54名が在籍中である。

 出身国は中国(39名)、タイ(4名)、バングラデシュ(3名)、カンボジア(2名)、ネパール(1名)、パキスタン(1名)、べトナム(1名)、ニジェール(1名)、チェコ(1名)、である。この他、バングラデシュからの私費留学生(大学院生)が1人いる。

 年齢的には20代後半、30代が多く、ほとんどは独身または単身留学であるが、夫や妻同伴者も数組いる。

 スタッフは私の他、若い職員が2名、日本語講師が1名いる。副センター長は留学生特別コース長の島弘先生で、英語教育のハンター先生や中国出身の任向実先生にもメンバーとして、協力・助言を頂いている。

 私達の日常業務の中心は留学生のお世話。毎日、入れ替わり立ち代わりやってくる彼らの相談に乗ったり、問題を解決したりしている。使用言語は英語と日本語。
 
 彼らは大学が設けた安価な留学生寮で生活しながら、美しいキャンパスで充実した研究を続けているが、行動空間が狭いことに難がある。

 彼らは「もっと日本を知りたい!」「もっと日本人の中に入っていきたい!」「自分たちの国の文化も知ってほしい!」と思っているのである。地域の方々との交流も今後の大切な課題である。

 この他、大学間交流協定関係の仕事や日本人学生の派遣に関する業務もあり、これからも仕事は広がっていきそうだ。

 グローバル化、インターネットの時代だから、東京など通さず、私達は自由に世界各地の大学とeメールや電話で連絡を取り合っている。

 まるで、土佐山田の田んぼの中から太平洋を見下ろしつつ仕事をしているような雄大な気分である。   

 昼休み、食堂やキャンパスで留学生達に会うのは楽しい。彼らとの会話のお陰で、私の知識や視野はどんどん広がっていく。

 時々中国語やイスラームに関する少しばかりの知識を披露すると、彼らはとても喜んでくれる。

 来年3月には特待制度による第1期の留学生が巣立つ。彼らが母国に帰って活躍することを祈ると共に、お互いの交流の絆をより確実なものにするために、キーパーソンとして尽力してくれることを願っている。

 退職したら、卒業生達を訪ねて、世界各地を旅行しよう! 早くも初夢を見てしまったようである。




未来に向かって― 2005年の秋