とらのように強い意志を持って!
今日はまた、日本語弁論大会優勝作品をご紹介したい。1996年の日本留学予備教育課程の部では、マラヤ大学予備教育課程在籍の女子学生が、麻薬の問題を取り上げて「強い意志を持つこと」の必要性を訴えた。
マレーシアへの入国カードには「麻薬運搬者はマレーシアの法律のもとに死刑」と記されているが、隣国との国境が接近していて密入国者なども多いマレーシアでは、麻薬は一つの社会問題になっている。9月6日付けのニュー・ストレーツ・タイムズによれば、麻薬中毒者は全国で23万5000人と見られ、エイズ感染者の多くが麻薬中毒にもかかっていると言う。
とらのように強い意志を持って!(ハニタ・ディアナ)
みなさんは、どんな動物が好きですか。ねこですか。パンダですか。それとも、コアラですか。多分何か、かわいい動物が好きな方が多いと思います。でも、私はちょっと違います。私はとらが好きです。
なぜかというと、まず、とらはハンサムだからです。ハンサムということをどう表現したらいいかわかりませんが、本当にとらの顔をしっかり見ると、とらの無邪気な性格が何となく感じられて、好きだなと思うのです。
それから、とらは私をどろぼうや悪い男の人から守ってくれます。町へいく時、とらをボディーガードとして連れていけば、誰も私に迷惑をかけようとしないでしょう。だから、私は安全に買い物や散歩が出来ます。
それだけではなく、もう一つ大きな理由があります。それは、とらが強い意志のシンボルだということです。
みなさんは、このマークをご覧になったことがありますか。これは、マレーシアの国のマークです。どうして、この中にとらが使われているのでしょうか。それは、マレーシアの人々はとらが強い意志を持ったいい動物だと考えているからです。
もう一つ、このマークをご存知ですか。実は、これは、私が今勉強しているマラヤ大学のマークです。ここにも、とらがいます。3頭もいます。勉強を続けるには強い意志が必要です。だから、大学のマークの中にも、とらがいるのでしょう。
実は私も、スピーチを書き始めた時、アイディアがなかなか出てこなくて本当に困りました。何日たっても、始められなくて、もう少しであきらめてしまうところでした。
でもある日、ふと、とらのことを思い出しました。とらは敵と、とても勇ましく戦います。その姿は、とても素敵です。私もとらのように、強い意志を持って、私のスピーチと勇ましく戦いたいと思いました。そして、幸運なことにその戦いに勝ったので、こうしてスピーチを完成することが出来たのです。
さて、現在、マレーシアの社会においても、様々なところで、とらが必要になっていると思います。その中で、最もとらが必要なのは、麻薬の問題に関してだと思います。
7月23日のウトゥサン・マレーシアという新聞によると、最近ぺタリンジャヤで34人も麻薬を吸って警察に逮捕されたということです。これは、ほんの一つの例で、この他にも多くの場所で、麻薬の犯罪が行われています。麻薬の問題は、今、マレーシアで本当に深刻になっています。
あるデータによると、麻薬を吸うのは、18歳から29歳の若者が多いということですが、彼らはどうして麻薬を吸うようになったのでしょうか。これにはいろいろな理由が考えられると思います。
一つは、家族の問題だと思います。親がいつも仕事ばかりして、子供たちと話したり、遊んだりすることがあまりないと、子供たちは寂しくなってしまいます。そして、その寂しさを忘れるために、麻薬を吸うようになるのです。このことについては、誰が非難されるべきなのでしょうか。
それから、麻薬に誘う友達がいることも一つの原因だと言われています。友達に雰囲気の悪い所へ連れていかれて、そこで麻薬を勧められて断れなくて吸ってしまうのです。麻薬は悪いことだとわかっているのですが、もし断れば、友達から仲間外れにされてしまいます。だから、仕方なく吸ってしまうのです。
みなさん、ここで、もう一度、どうしてこのような麻薬の問題が起こるのか、しっかり考えてみましょう。さっき、家族や友達がその原因だと言いましたが、この2つが、本当に根本的な原因だと言えるのでしょうか。私はそうは思いません。もっと重要な原因があると思います。それは、麻薬を吸ってしまった人自身の問題です。
自分のことを決めるのは、自分自身です。だから、他にどんな理由があっても、強い意志を持っていれば、麻薬を吸わないでいられると思います。もし、強い意志を持っていれば、家族の問題とか悪い友達に影響されることはないと思います。そのような強い意志を持っていない人が自分自身に負けて、麻薬を吸ってしまうのです。残念なことだと思います。
もし、人々が皆、とらのように強い意志を持てば、麻薬の問題だけでなく、どんな問題でも解決できると思います。自分が正しいと思うことは、どんなに他から邪魔されても、怖がらずに、それを貫くべきです。麻薬の問題も悪いことだとわかったら、いつまでも吸い続けないで、すぐにやめるべきです。また、麻薬を吸う人は麻薬を売る人を知っているのですから、その人に売るのをやめさせるべきです。
マレーシアには、麻薬の問題の他にもいろいろな問題があります。売春の問題、赤ちゃんを捨ててしまう問題、自殺の問題などです。でも、それも、問題から逃げないでとらのように、強い意志をもって立ち向かえば、時間がかかっても、必ず少しずつ解決していけると思います。
みなさん、生きていれば、いろいろな問題が出てくるのは当然です。その時、是非、とらが勇ましく戦う姿を頭の中に思い出して下さい。そして、勇気を出して、その問題と戦って下さい。他の人のことを変えることは難しいですが、自分のことを変えることは、きっと出来るはずです。私たち一人一人が、とらのように強い意志を持てば、マレーシア全体、そして世界全体がよくなっていくと私は思います。
これで、私のスピーチを終わります。どうもありがとうございました。