ハリラヤ初日、三年ぶりに首相のオープンハウスに行った。前回は首相公邸がクアラルンプール市内にあり、我が家からも車で20分位で行けたのだが、今回は50キロ近く離れた新行政都市プトラジャヤまで出かけなければならなかった。とは言え、ハリラヤはバリッ・カンポン(里帰り)する人が多く、道路は空き空きで、一時間もかからずに目的地にたどり着くことが出来た。

 オープンハウスの場所こそ変わっていたが、雰囲気はこれまでとほとんど変わっていなかった。旧公邸に比べ、何倍もゴージャスになった新公邸で長蛇の列を作って順番を待ち、首相夫妻との一瞬の握手に満足した後は、見晴らしが利く広々とした庭園に出て、ハリラヤのご馳走をいただく。食べ物は以前にも増して豊かで、何回もおかわりが出来た。みなピクニック気分で、テントの下に用意されたテーブルに座ったり、芝生の上で足を伸ばしたりして、休日のひとときを楽しんでいる。

 ほとんどがマイカーでやってきた家族連れで、小さな子供たちの姿も目立つ。「強制」とか「動員」の陰りは微塵もない。インド系や中国系に比べ、マレー系が少なかったので、マハティール首相に対するマレー系の人気が低いのかしら、とも思ったが、よくよく考えてみると、それはマレー系がほとんどバリッ・カンポンしていたり、クアラルンプールにいても断食明け初日は家族の行事で忙しいからなのだろう。

 私は何時の頃からか、このハリラヤ・オープンハウスをこの国の安定度を知るひとつのバロメーターだと考えている。いつも感じるのは、この地域の指導者は選挙で票を得るばかりではなく、平素から「敬い」「慕われる」存在でなければならない、ということだ。

 野党のKeadilan は党首のワン・アジザ女史が同日自宅でオープンハウスを行なった。同じく野党のPAS(汎マレーシア・イスラーム党)も大分遅れて月末にクアラルンプールで党主催のオープンハウスを計画しているそうだ。

 また、今週末には政府(文化芸術観光省)が観光促進の一環としてジョホールバルで大掛かりなハリラヤ・オープンハウスを企画しているという。今月13日に即位された新国王夫妻や首相・副首相夫妻も参加し、隣国シンガポールの政府関係者も招待を受けているそうだ。

 マレーシアでは政教分離どころか、「宗教」、「文化」、「政治」が一つに束ねられて、国家のエネルギーを引き出していると思えるこの頃である。