よき不便さ

 空港のカウンターでのこと。「お客さま、汚れが付きやすいおかばんですが、ビニールのカバーをおかけしましょうか」。一瞬迷ったが、「お願いします」と言ってしまい、後悔した。「また、ごみを増やしてしまったなあ」と。

 上京するたび、ビルの谷間にコンビニが増え、公共のトイレが「進化」していくのに驚く。「古いままで、かまんのに」と独り言。

 この春、学生を引率してヨーロッパ研修に行った。ドイツでは専ら公共交通機関を利用して移動。受け入れ大学側では、学生が空港から宿舎まで専用バスで、などという「ぜいたく」は想定外だったようだ。

 重いスーツケースを引っ張っての地下鉄や電車の乗り降りは大変だったが、おかげで費用の節約になったばかりでなく、よい経験にもなった。質実剛健の文化に教えられた思いがした。

 学生たちの気づきが面白い。ドイツや英国のエレベーターには「閉」のボタンがない! 日本人はせっかち過ぎるのではないか。トイレ、コンビニ、自販機も少ない! 日本は便利すぎるのかもしれない。

 便利さや丁寧さはこれまで日本の美徳であったが、東日本大震災後、「よき不便さ」を模索し始めた人は少なくないだろう。   (凛)