古いファイルを整理していたら、東日本大震災の時にマハティール元首相が日本人に寄せた文章が出てきて、深く心を打たれた。高知新聞に掲載されたその記事を紹介する。


東日本大震災  マハティール氏からの手紙
☘ 「偉大な国民」試練乗り越えて ☘

2011年3月22日

                           
 「日本に学べ」というルック・イースト(東方)政策で、マレーシアを高度成長に導いたマハティール・モハマド元首相が、東日本大震災被害と福島第一原発事故に取り組む恩人、日本人を激励する文章を寄せた。

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被災者の皆さん、日本の皆さん。

 大津波に襲われた東北地方の方々に降りかかった災いに、お悔やみ申し上げます。悲しみの想いは言い尽くせません。

 大津波で命を失った人々が、その時抱いた恐怖感。生き残った人々が、家族や友人、隣人を失ったと知った時の悲痛。大災害など思ってもみず暮らしていた人々が、あっという間に自分たちの町や村が破壊し尽くされるのを見て抱いたおののき。これらは新聞やテレビ映像では表し切れないでしょう。

 犠牲者や行方不明者の正確な数はまだ知れません。悲しい思いのみです。犠牲者はどうか安らかにお眠りください。ご家族にお悔やみ申し上げます。不明者には生きて見つかるようにと祈ります。この未曽有の被災に対しマレーシア人すべてが等しく悲しみを抱いています。

 日本は自然災害の多い国です。日本人はその悲劇を耐え忍んできました。その忍耐力は有名です。でも、今回の大震災は耐え難いだろうと思います。しかし、やがて日本人は悲しみを乗り越えて、破壊された町を、村を立て直していく。そう信じています。世界中が日本に共感し、日本を応援しています。この試練の時、マレーシア国民も日本人と悲しみを分かち合っています。

 地震と津波だけでなく、今回は原子力発電所事故も脅威となっています。各国で原発建設計画が進む中、原子力平和利用のパイオニアに悲劇が訪れてしまいました。核兵器が使われた唯一の国で、この苦難が起きているということを思い起こさずにはいられません。

 もちろん、この二つには何のつながりもないのですが、日本人が核利用の危険を再び世界に知らせることになったのは、悲しいことです。核分裂物資を損傷したり、漏えいしたりすると、有害な放射能が出てしまいます。でもそうした物質を安全に扱うための知識はまだ足りないのです。原子力の扱い方について、必ず知識は増えていくでしょう。しかし、こんな悲惨な経験をしなければ、原発の危険、正しい原発立地について学べないのは悲しいことです。

 事故現場から離れた地にいる日本人にまで放射能被害が及ばないように祈っています。

 マレーシア国民は日本と日本人から多くの恩を受けています。この悲劇と試練の時に当たって、私たちは仙台をはじめとした東北太平洋岸の被害者の方々を思わずにはいられません。マレーシア政府が救助隊派遣を申し出たのはうれしいことです。

 家族や友人、家を失った人々は支援を得て、必ずや生活を再建するでしょう。その方々に二度とこんな恐怖が訪れないようにと祈ります。

 最後に、家族を亡くされた方々にお悔やみを申し上げるとともに、偉大な国家の偉大な国民である日本人が、試練と苦難を乗り越えて、再び立ち上がりますように。

            マレーシアより、 マハティール・モハマド