ジハッド(聖戦)への呼びかけ ―アブドゥラ副首相はこう語る
9月11日の米国同時多発テロ、10月7日の英米アフガン攻撃、そして世界各地に広がる波紋の数々・・・。ニュースから目が離せない。マレーシアでも注目すべき動きがあったので、お伝えしたい。
1.10月10日、KMM(マレーシア聖戦戦士組織)のメンバーとされる6人がISA(国内治安維持法)で逮捕された。アフガニスタンでゲリラ訓練を受けた者も含まれているが、本件は今回の米国同時多発テロとは直接関係がなく、今年に入って政府が強化している治安維持のための取り締まりの一環として行われたものある。
ISAとは国内治安維持のため、逮捕状なしで最長2年まで拘置できる法律で、1960年に制定されて以来、今年9月までに4218人が逮捕されている。これまでに逮捕された18人のKMMメンバーの中には野党PAS(汎マレーシア・イスラーム党)党員も含まれていることから(クランタン州首席大臣ニック・アブドゥル・アジズの息子ら)、本件は与野党間の大きな争点の一つとなっている。
2.野党PASが米国のアフガン攻撃に反対して、タリバンとともに米国と戦う『ジハッド(聖戦)』を呼びかけている。(どの程度具体的な行動に出ているかは不明)
3.10月11日、与党連合・国民戦線(BN)青年部がアメリカ大使館を訪れ、米国のアフガニスタンに対する武力行使を非難した抗議書を手渡した。プラカードや鳩を携えて、百人余りがデモに参加した。
4.10月12日昼過ぎ、タブン・ハジ(巡礼基金ビル)のモスクなどで金曜礼拝を済ませた群集が近くのアメリカ大使館へ流れ、大規模な抗議デモを行なった(新聞によりかなり扱い方が違い、デモ参加者も「New Straits Times」は3000人以上、「The Star」は4000人以上、「The Sun」は2500人以上、「Utusan Malaysia」は 2000人と報道)。
デモは野党PASが計画したもので、ファジル・モハマッド・ノール党首がアメリカ大使館に抗議書を手渡した。無許可デモであったため、警察が放水するなどの措置を取ったが、逮捕者、、怪我人は出なかった模様。
ところで、イスラーム国では金曜日は「何かが起こる」日である。この日はムスリムにとって聖なる日(州によっては休日)で、男性たち(男性に限る)は昼にモスクに行って合同礼拝を行なうことが義務づけられている。この時、「自然発生的」に(と見えるように)、「こと」(デモ)が起きることはよくあることだ。
1998年から99年にかけての「政治危機」の折にも、無許可デモは金曜日の礼拝後に起こることが多かった。群集と警察の間の暴力沙汰が世界中の映像に流れたが、マレーシアの場合、他の多くの発展途上国とは異なり「軍隊」が「治安維持」のため出動することはない。これはマレーシアが誇るべきことのひとつである。
5.米国とマレーシアの間で、「報道記事」をめぐっていくつかの「誤解」や「すれ違い」が生じている。
6.外務省、新設の女性家族省、民間組織などが中心となってアフガニスタンに対する人道的援助プログラムを開始している(募金、パキスタンへの人の派遣など)。
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さて、マレーシアの治安維持の責任者は内相兼任のアブドゥラ副首相であるが(1999年までは首相が兼任)、同副首相は10日、次のような発言をしている。
マレーシア人はアフガン問題に干渉すべきではない
(2001年10月11日、New Straits Times)
アブドゥラ副首相は野党PASが米国に対するジハッド(聖戦)を宣言したと言われることについて、「マレーシア人は米国と戦うためにアフガニスタンへ行くべきではない」と次のように述べた。
「マレーシア人はアフガニスタンの内政に干渉をしていると見られるべきではなく、国民はこの問題について政府の取る立場を支持すべきである」
「PASは『聖戦』を奨励するべきではない」
「マレーシアはアフガニスタンで起こっていることに同情はしているが、だからといって(米国と戦うために)アフガニスタンに国民を送るべきではない」
「国民は政府の、国連主導によるテロ根絶のための国際会議開催への努力を支援すべきである」 (以下略)
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